【第105回】原 舞里さん\DMを送る側から、声をかけられる側へ/〜場に立つことで変わった、1年の話〜

「この先、私は何ができるんだろう。子どもが大きくなった時、自分には何が残っているんだろう」

慣れない土地での子育てに専念する毎日。ふと立ち止まった時、そんな漠然とした焦りや将来への不安に襲われたことはありませんか?かつての専業主婦から一歩踏み出し、現在はSABRINA DESIGNの代表として活躍するWebデザイナー・原舞里(はら まり)さんも、かつてはその一人でした。

しかし、現実は甘くありませんでした。「100通のDMを送っても返信がない」という過酷な営業地獄。そんな彼女が、わずか1年後には公的機関のイベントに「先輩起業家」として登壇し、自らの経験を語るまでになったのです。

一体、何が変わったのか。彼女が変えたのは、デザインの技術力だけではありませんでした。ただ一つ、「自分の立ち位置」を変え、効率の罠から抜け出したのです。この記事を読み終える頃には、停滞した現状を打破し、あなたを「見つけてもらえる」場所へ導くヒントが見えてくるはずです。

効率の罠――「探しに行く」アウトバウンド営業の限界

千葉県出身の原さんは、実は伝説のロックバンド「X JAPAN」のYOSHIKIさんの母校の後輩にあたります。レジェンドと同じ学び舎で育った彼女には、根底に強い「底力」がありました。しかし、結婚を機に縁もゆかりもない姫路へと移り住んだ生活は、そのガッツさえも削り取るような孤独との戦いでした。

「自分に手に職をつけたい」と決意した彼女は、2つのオンラインスクールへ高額な自己投資を行います。しかし、独学期間も含め、当時は「何がわからないのかさえ、わからない」という暗闇の中にいました。ようやく開業にこじつけても、待っていたのは「存在を知られていない」という冷酷な事実です。

  • 「狩猟型」の営業: ビジネスマッチングアプリ「イエンタ」で毎日スワイプを繰り返す。
  • 「数」への依存: SNSで見かけた相手に片っ端からDMを送る。

これらはビジネス用語で言えば「アウトバウンド(プッシュ型)」の営業です。自分から追いかけるこの手法は、実績のない初期段階では極めて効率が悪く、精神をすり減らします。

「DMを百通送っても起きなかったことがそこで起きていました」

原さんは当時を振り返り、そう語ります。どんなに営業トークを磨いても、戦う場所を間違えていれば、その声は誰にも届きません。

スキルの向上より先に、貢献の「場に立つ」

転機は、異業種交流ギルド「クロストーク」への参加でした。しかし、彼女が最初に行ったのは、自分のデザインを売り込むことではありませんでした。意外にも、運営の「お手伝い」であるサブMCを引き受けたのです。

  • 役割: Zoomの操作、進行サポート、事務局業務。
  • 行動: 毎週、参加者の前に顔を出し、場を整える。
  • 本質: 参加者が安心して交流できる環境を「ファシリテート(促進)」する。

これが彼女のビジネスを劇的に変える「インバウンド(プル型)」マーケティングの始まりでした。ただそこに「いる」だけでなく、コミュニティの成功に貢献する姿を見せ続けること。それが、どんな名刺よりも強力な自己紹介になったのです。

わざわざ営業をしなくても、「いつも支えてくれる原さんって、何をしている人?」と自然に興味を持たれる状態。 「LP(ランディングページ)を作っています」と答えるだけで、「実はうちも困っていて」と相談が舞い込む。「探しに行く」のをやめて「場に貢献する」こと。 立ち位置を変えただけで、彼女を取り巻く景色は一変しました。

リアルな繋がりの「信頼」が、想像を超えたチャンスを運ぶ

オンラインでの地道な信頼蓄積は、やがてオフラインの「熱量」と結びつき、大きな波及効果を生みました。自分一人では到底たどり着けなかったステージへ、周囲が押し上げてくれたのです。

その象徴が、先月開催された明石市産業振興財団のイベント「起業家トークライブ」への登壇でした。コーディネーターを務めた國光洋志氏との縁も、やはりこのコミュニティでの活動から生まれたものでした。

1年前、DMの返信が来ずに肩を落としていた女性が、公的機関の場で「先輩起業家」として、これから夢を追う人々に勇気を与えている。 この劇的な変化は、スキルの向上以上に、「他者に貢献し、見つけてもらえる環境に身を置き続けたこと」がもたらした必然の報酬だったと言えるでしょう。

信頼の正体――「サポートの精神」がデザインの価値を変える

現在、原さんがLPデザイナーとして「選ばれ続ける理由」は、単に綺麗なページを作るからではありません。コミュニティの運営で見せてきた「相手に寄り添い、場を整える姿勢」が、そのまま彼女の仕事のスタイルとして信頼されているからです。

  • 徹底したリスニング: お客様のやりたいことをじっくりと「聞く」。
  • 言語化の伴走: 「結局、見た人にどうして欲しいのか」を一緒に言葉にする。
  • 安心感の提供: 制作の目的(コンセプト)を明確にし、迷いをなくす。

「あの時、完璧にZoomを操作して進行を支えてくれた原さんなら、私の大切なビジネスも安心して任せられる」 コミュニティ内での「貢献の信頼」が「プロとしての信頼」へと変換されているのです。顧客の言葉にならない思いを汲み取り、形にする力。それは、彼女が「場」に立ち、人々と向き合い続けて得た最大の武器です。

まとめ:あなたは今、自分を見つけてもらえる場所にいますか?

「営業がうまくなったわけではない。場所を変えただけ」

原舞里さんのストーリーは、孤独に戦うフリーランスや起業家に、進むべき道を指し示してくれます。もし今、あなたが「頑張っているのに成果が出ない」と感じているのなら、必死に誰かを探しに行く手を一度休めてみてください。

まずは、自分の立ち位置を変え、誰かのために「手を挙げてみる」ことから始めてみませんか。

  • 気になるコミュニティの運営や部活動のお手伝いをしてみる。
  • 自分のスキルを使って、誰かのサポート役に回ってみる。
  • 「冒険の案内人」として、まずは目の前の人の役に立ってみる。

そんな小さな貢献の積み重ねが、1年後、あなたを想像もしていなかった場所へと運んでくれるはずです。

最後に、自分に問いかけてみてください。 「あなたは今、自分を一番見つけてもらえる場所に立っていますか?」