【第106回】庄坪 奈津希さん\自分の人生を選び直す/〜人の正解から自分の人生へ〜

毎日を必死に駆け抜けているのに、なぜか手応えが得られない。周囲と比べては「自分には才能がないのではないか」と、出口のない迷路で足踏みをしているような感覚――。こうした「空回り感」は、現代を生きる私たちが共通して抱く病理のようなものかもしれません。

私たちは幼い頃から「苦手なことを克服しなさい」と教えられ、社会に出れば「汎用性の高いジェネラリスト」であることを求められます。しかし、真に自分らしく輝き、圧倒的な成果を出す鍵は、スキルの積み上げではなく、もっと根本的なところにあります。それは「自分の役割(本質)」を正しく認識し、人生を「選び直す」ことに他なりません。

10年という長い歳月を深い自己否定の中で過ごし、そこから劇的な変容を遂げたSNSクリエイター・庄坪奈津希氏の物語は、私たちが自分自身の「取扱説明書」をいかに読み間違えているか、そして役割を変えることがいかに人生を解放するかを、鮮やかに示してくれます。

透明な檻:自己否定の正体は「不向きな場所」での努力だった

庄坪氏はかつて、動画制作会社の社員として10年間、淡々と制作業務に従事していました。16歳での妊娠、3人の子供を育てるシングルマザー。生活の重圧を背負いながら、彼女は必死にモニターと向き合い続けていました。しかし、そこでの日々は自己研鑽というより、自己処罰に近いものでした。

「なんでこんな簡単なことがミスしてしまうんやろうっていうことがすごい何回も起こって……自分をずっと責めてきました」

幾度となく繰り返されるミスと、それに対する謝罪。周囲の優しさに救われながらも、彼女の中に形成されたのは「自分は何もできない人間だ」という強固な思い込みでした。

今振り返れば、その苦しみは能力の欠如によるものではありませんでした。彼女の本質は、後述する「表舞台」で光を放つエネルギー。それを「裏方の緻密な作業」という檻に押し込めていたこと自体が、悲劇の始まりだったのです。私たちは、適性のない場所で努力し続けるとき、自分自身を「欠陥品」だと誤認してしまう性質を持っています。

4000年前の軍事戦略を、現代の「生きる指針」へ

転機は、会社の動画事業撤退という形で訪れました。退職し、フリーランスとして独立。3人の子供を養わなければならないという「なんとかしないと」という危機的状況。そんな切羽詰まった彼女の前に現れたのが、二つの出会いでした。

一つは、オンラインコミュニティ「クロストーク」を主宰するヤマタツ氏。深刻な悩みを抱え、「私はどう生きていけばいいですか?」と漠然とした問いを投げかける庄坪氏に対し、彼はどこまでも「にこやかで、軽やか」でした。「じゃあ、これしてみたら?」というその圧倒的な「軽さ」は、自責の念で固まっていた彼女の心を、少しずつ解きほぐしていきました。

そしてもう一つが、4000年の歴史を持つ「算命学」という学問です。

算命学は、単なる占いではありません。かつて中国の戦国時代において、軍師たちが「誰をどの配置に置けば勝てるか」を研究し尽くした適材適所の人間学です。この知恵を用いた勢力は、わずか6年で中華統一を成し遂げたといいます。

現代のビジネスシーンにおいても、これは有効な戦略資源となります。組織の配置、コンサルの視点、そして何より「自分という資源をどこに投下すべきか」という自己戦略。庄坪氏は、この学問を通じて、自分自身の「真の役割」を突きつけられることになります。

「魅力本能」の覚醒:強みは自覚の外側に眠っている

算命学が導き出した彼女の本質。それは10年続けてきた「裏方作業」とは真逆の、人との関わりや営業を通じてエネルギーを循環させる「魅力本能」という特性でした。

「自分は裏方で誰かを支えるのが分相応だ」と思い込み、引きこもって作業に没頭していたことは、彼女の宿命に対する最大の「違反」だったのです。

彼女は決断しました。自分の苦手な作業を、それが得意な他者に潔く依頼し、自分は「人と会い、魅力を発信する」という本来の役割に専念することにしたのです。「自分で全部やらなければ」という他人軸の呪縛から、自らの意志で脱却した瞬間でした。すると、停滞していた事業は、堰を切ったようにスムーズに回り始めました。

宗教扱いされた日を越えて:恐怖の先で掴んだ「家族の形」

役割を再定義した彼女に、最大の試練が訪れます。それが「コンテストへの出場」でした。

人前で話すことなど、人生で最も避けてきたこと。しかし、ヤマタツ氏や仲間に背中を押され、「自分の宿命を試してみたい」という一心で舞台に立ちます。結果、彼女は「兵庫エリアグランプリ」を受賞。かつてミスを繰り返し、謝罪ばかりしていた女性が、何百人の前で光を浴びたのです。

「発信することによって、何か人に勇気を与えたりとか、感動したって言ってもらえたりとか、影響を与えれることがあるんだなと体感して、少しやっぱり自信が持てるようになりました」

この挑戦がもたらしたのは、賞賛だけではありません。最も劇的な変化は、家庭にありました。

それまで算命学や自己研鑽に励む彼女を、子供たちは「お母さん、宗教でもやってるの?」と揶揄し、どこかバカにするような目線で見ていたといいます。しかし、母が恐怖を越えて舞台に立ち、自らの役割を全うする姿を目の当たりにしたとき、その揶揄は「心からの応援」へと変わりました。母親が「一人の人間」として自分の人生を選び直した姿は、子供たちにとっても一筋の光となったのです。

人生を「選び直した」先に広がる景色

自分の特性を認め、適切な場所に身を置く。たったそれだけの「配役変更」が、彼女の現実を塗り替えました。

  • 売上の飛躍(前年比4倍): 自分の特性に合わない作業を切り離し、営業と関わりに特化した結果、ビジネスは圧倒的な加速を見せました。
  • 家庭環境の融和: 「一人で頑張る」のをやめ、子供たちに支えられ、応援されるという対等で健やかな関係性を構築。
  • 他人軸からの完全な解放: 「普通はこうだ」「こうあるべきだ」という社会の正解ではなく、「自分がどう生きたいか」を全ての選択の基準にするマインドセットへの転換。

あなたはどの役割を自分に与えますか?

庄坪氏がこの物語を通じて私たちに伝えているのは、「人と自分は全く違う」という、シンプルでいて強力な真理です。

私たちは、自分と誰かを比較しては、足りない部分を埋めようと躍起になります。しかし、その「足りない部分」こそが、他者の役割が入り込むための「余白」なのかもしれません。自分の本質を知り、互いの特性を尊重し合えるようになれば、この社会から無用な否定は消え、誰もが自分の場所でキラキラと輝けるようになります。

人生の配役は、いつからでも変えられます。10年の自己否定があろうとも、今日、この瞬間から「選び直す」ことができるのです。

あなたは今、誰かの決めた「正解」を生きていませんか? もし今日、自分の人生を自由にプロデュースできるとしたら、あなたはどの役割を自分に与えますか?