なぜ私たちは「自分を好き」と言えなくなるのか
「自分のことが大好き!」と、胸を張って言える大人は今の日本にどれくらいいるでしょうか。幼い頃は何でもできると信じていたはずの私たちが、いつの間にか自信を失い、自分を責めてしまう。その背景には、知らず知らずのうちに私たちが「人と比べる環境」に身を置いているからなのかもしれません。
学校や社会では、常に数字や成績で評価されます。そこでは、最初から「100点満点からの減点方式」で自分を見てしまいがちです。理想の100点から、できない部分を見つけては「マイナス◯点」と自分を削り、標準に届かない自分を「ダメな存在」だと思い込んでしまう。
本来、私たちの命はゼロからスタートし、生きているだけで「プラス」が積み重なっているはずです。それなのに、減点方式の思考が自己嫌悪を生み、私たちの心を追い詰める負のループを作り出しているのです。
子供たちの叫びと「暗黒期」の記憶
現代の子供たちが置かれている状況は、私たちが想像する以上に切実です。統計では、実に2人に1人の子供が「自死を考えたことがある」という衝撃的なデータもあります。この心の叫びは、決して特別な誰かの話ではありません。
子育て寄り添いサポート「hoop mooi(ホープ・モーイ)」の代表を務める山﨑美香子(やまさき・みかこ)氏も、かつては自身の「子育て暗黒期」に深く苦しんだ一人でした。16年のキャリアを持つ保育士でありながら、いざ自分の子育てとなると、プロとしてのプライドが逆に足枷となります。「保育士なのにうまくできない」という苛立ちを、当時7歳だった長男にぶつけてしまう毎日。
そんなある日、追い詰められた長男の口から漏れたのは、母親の魂を揺さぶるような言葉でした。
「俺なんか生まれてこない方が良かったやんな。母ちゃんを困らせてばっかりで」
その年の長男からの誕生日カードには、感謝ではなく、自分を責める「ごめんね」の言葉だけが埋め尽くされていました。
毎晩の「生まれてきてくれてありがとう」が起こす奇跡
暗闇の中にいた山﨑氏が、藁をもすがる思いで始めたのが、最もシンプルで強力な「魔法の言葉」でした。それは、毎晩寝る前に「生まれてきてくれてありがとう」と伝えることです。
どれだけ激しく怒ってしまった日でも、顔を見るのも嫌になるほど喧嘩をした日でも、布団の中でこの一言だけは無理やりにでも絞り出しました。最初は照れくささもありましたが、ただ存在を丸ごと肯定する言葉を送り続けたのです。
すると、1年後。奇跡のような変化が訪れました。長男の手紙からあんなに溢れていた「ごめんね」が消え、そこには「母ちゃん、僕を産んでくれてありがとう」という言葉が綴られていたのです。「何ができるか」ではなく「そこにいるだけで素晴らしい」というメッセージが、1年という月日をかけて子供の心の土台を塗り替えました。

「脳は主語を認識できない」という驚きの真実
この習慣が変えたのは、子供だけではありません。心理学・脳科学の視点から見ると、そこには驚くべき仕組みがあります。実は、人間の脳は「主語」を正確に認識するのが苦手だと言われています。
子供に向けて「あなたなら大丈夫」「あなたはあなたのままでいい」と声をかけているとき、その言葉を一番近くで、一番多く聞いているのは、他ならぬ自分自身の脳なのです。
子供の存在を肯定し続けることは、結果として「保育士なのにできない」と自分を責め続けていた山﨑氏自身の心にも浸透していきました。「私も、私のままでいいんだ」と思えるようになり、ガチガチだった心が解け、母親自身の自己肯定感が回復していったのです。
性教育の本質は「命の奇跡」を知ること
山﨑氏が提唱する「おうち性教育」は、単なる知識の伝達ではありません。それは、「生きているだけで、実はとてつもない確率を勝ち抜いてきた奇跡なんだ」と実感するための「命の教育」です。
自分が数億分の一という天文学的な確率を乗り越えて生まれてきた「奇跡の存在」だと知ることは、根源的な「信じる力」に繋がります。この力は、人生の荒波を乗り越える武器になります。
実際、友人関係に悩み不登校になった山﨑氏の長男は、この「自分は大丈夫」という根底の自信を糧に、自らの力で復学を果たしました。さらに、周囲から「合格は無理だ」と言われた第一志望の高校受験でも、自分を信じて努力し続け、見事に合格を勝ち取ったのです。
今夜、お布団の中で自分に声をかけることから始めよう
子育てに正解を求め、自分を追い詰める必要はありません。私たちはみな、存在しているだけで100点満点、いえ、それ以上の奇跡の中にいます。
まずは今夜、お布団の中で、お子さんに、そして自分自身にそっと声をかけてみてください。
「生まれてきてくれて、ありがとう」 「今日も一日、一生懸命生きたね」
このシンプルな習慣が、あなたと大切な家族を守る最強のお守りになるはずです。
最後に、あなたの心に一つの種を。 「今、ここに存在しているあなたが、数え切れないほどの困難を勝ち抜いて生まれてきた『奇跡そのもの』であることに、気づいていますか?」

