【第84回】 山本達也さん\ それが、楽しかったから。 / 〜 ブレーキをはずした話 〜

「正解」という名の鎧を装備しようとして、動けなくなっていませんか?

「自分でなんとかしなければ」「完璧な準備が整うまでは動けない」……。 そうやって「正解」という名の重い鎧を装備しようとして、足が止まってはいませんか?あるいは、たった一人で事業を守ろうとして、孤独な戦いに疲弊してはいないでしょうか。

今回ご紹介するのは、50歳で一念発起して起業し、わずか1年で元手の300万円を使い果たした男、山本達也氏(通称:ヤマタツさん)の物語です。

一見すると絶望的な失敗談。しかし、彼はこの300万円を単なる損失ではなく、「人との繋がり」という無形資産への投資期間だったと鋭く分析します。

なぜ、実績が空っぽの状態から、340人以上の仲間に「勝手に宣伝される」存在になれたのか。この記事では、彼が実践した「コミュニティの力を使って自分をアップデートする方法」を紐解いていきます。

「プライドという名のブレーキ」を外した瞬間に、景色は変わる

ヤマタツさんが再起のプロセスで最も重視したのは、「ブレーキをはずす」という思考です。

50歳で独立した際、彼はある「手痛い洗礼」を受けます。前職ではアウトソーシングの管理職として「求人を出す(企業)側」にいた彼は、ハローワークの仕組みを熟知しているつもりでした。しかし、いざ自分が会社を辞めて足を運ぶと、職員にこう諭されたのです。

「山本さん、求職者側の建物はあっちですよ」

企業側と求職者側では建物すら違う。元管理職としての自負が、音を立てて崩れた瞬間でした。しかし、彼はここで腐りませんでした。むしろ「自分はもう会社員ではない」とブレーキを外し、ハローワークに掲示されていた職業訓練(Web講座)に飛び込んだのです。

彼の目的はスキル習得だけではありませんでした。「ここに行けば、同じ志を持つ仲間20人と繋がれる」という確信。これこそが、プライドを捨てて得た真の収穫でした。

「ブレーキをはずす。熱量はカタチを変えて帰ってくる。」

この言葉通り、彼が創業塾の富田先生や仲間たちに見せた「楽しそうなことにフラフラと飛び込む」熱量は、後に「姫路経済新聞」の記者活動や、AI講師としての依頼という形で彼のもとへ帰ってきました。

【キーポイント】 プライドは、あなたが所有できる最も高くつく「ブレーキ」である。

目と耳と口が「340倍」になるコミュニティの魔法

ヤマタツさんが所属する「異業種交流ギルド:クロストーク」には、現在340人を超える会員がいます。彼はコミュニティに属する価値を「個人の拡張」だと定義します。

ヤマタツさんが経営する「合同会社デジタル窓口」のホームページを見てみると、驚くべき事実に突き当たります。制作実績(ポートフォリオ)の欄はほぼ空っぽ、実態は「ペライチ(1ページ)」で作られた極めてシンプルなサイトなのです。

それなのに、なぜ2年目も仕事が途切れず、ご飯が食べられているのか? その理由は、コミュニティによって自身の感覚が「340倍」に増幅されているからです。

  • :自分一人では届かない月面着陸を目指すベンチャー(アイスペース社)の社長へのインタビューなど、仲間の「目」がチャンスを連れてくる。
  • :最新のAIトレンドや地域の困りごとを、仲間の「耳」が拾ってきてくれる。
  • :自分が営業せずとも、340人の「口」が「あそこにヤマタツっていう面白い人がいるよ」とアピールしてくれる。

1人で戦うのは、1年目が限界です。しかし、コミュニティというレーダー網を味方につければ、あなたの実績が「1ページ」しかなくても、信頼という最強のバックボーンが仕事を運んできます。

【キーポイント】 個人のスキルは有限だが、コミュニティによる「感覚の拡張」は無限である。

自分のチラシは「自分で配らない」のが正解?

多くの起業家は「仕事ください」と書かれた自分のチラシを必死に配り歩きます。しかし、ヤマタツさんの発想は真逆です。「自分のチラシは、人に配ってもらう」のが正解だと言うのです。

これは、自分の「旗(自己紹介カード)」を仲間に預け、代わりに振ってもらう仕組みです。もちろん、これには「相手の旗を先に振る」という利他的な関係性が不可欠です。

ヤマタツさんは「仕事が欲しい」という下心の代わりに、「楽しそうなことにフラフラ行く」という軽やかさを持ち込みました。相手に「この人のために何かしてあげたい」と思わせる関係性を築く。そうして、未完成の自分という旗を誰かに託す勇気を持つことで、自分が動いていない時間も宣伝が回り続ける「相互支援」のループが完成するのです。

【キーポイント】 自分で配る100枚のチラシより、信頼する仲間が渡してくれる1枚の紹介状の方が重い。

顔出し不要?「スタンプ一つ」から始まる存在感の作り方

「コミュニティ活動は忙しくて無理」という言い訳を、ヤマタツさんは鮮やかに解消してくれます。オンライン上での認知を上げるためのコストは、実は驚くほど低いのです。

例えば、Zoom交流会での「耳だけ参加」や、オープンチャットでの「にっこりマークのスタンプ」。これらはビジネスにおいて「単純接触効果(ザイアンス効果)」と呼ばれる強力なマーケティング手法として機能します。

何度も目に触れる広告が信頼を得るように、スタンプ一つでもあなたの名前が画面に流れることは、仲間への「刷り込み」になります。「最近忙しそうだけど、あのスタンプの人は元気にしているな」という緩やかな認知の維持。これが、いざ誰かが「Webの相談をしたい」と思った瞬間に、あなたの顔を想起させるスイッチになるのです。

【キーポイント】 「にっこりスタンプ」は、最小コストで最大のリターンを生むマーケティング投資である。

正解を待たずに、走り出しながら「仲間」を見つけよう

ヤマタツさんが50歳で貯金を使い果たしながらも、現在、明石の産業振興財団でAI講師を務めるなど多方面で活躍できている理由。それは、彼が「正解」を持っていたからではありません。

正解を待たずに走り出し、その過程で出会った多くの仲間に「自分の旗」を預けてきたからです。完璧なチラシが完成するのを待つ必要はありません。未完成の自分という旗を、誰かに託すことから全ては始まります。

4月11日、かつて彼が「冒険のスタート」を切ったあの日のように、あなたも新しい扉を開いてみませんか? スキルは後からついてきます。しかし、今日踏み出す一歩だけは、あなたにしか決められません。

最後に、あなたに問いかけます。

「あなたは今日、誰かに自分の旗を預ける勇気を持てますか?」

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